「サスティナブル、SDGs(エスディージーズ)…なんだか難しそう」
わたしもそう思っていました。
この記事では「食器からできるSDGs」をテーマに小樽再生ガラスを企画したデザイナーが、学びながら見つけた、
ガラスとSDGsのつながり、小樽再生ガラスとは何かをご紹介します!
サスティナブル、SDGsとは?
最近よく耳にするふたつの言葉。それぞれ英語からきています。
サスティナブルは【サステナブル(Sustainable)=持続可能な、ずっと続けていける】という意味の形容詞です。
SDGsは【エス・ディー・ジーズ(Sustainable Development Goals)=持続可能な開発目標】の略称。
サスティナブルな暮らしとは?
「サスティナブル」とは、地球や自然環境を守り持続させる新しい考え方。なんだか難しそうですね…。でも!案外わたしたちの暮らしに身近です。
例えば2020年7月にレジ袋が有料化し、エコバックを持参するようになった人も多いのでは?
これも「サスティナブルな暮らし」の習慣のひとつです。(プラスチックゴミの削減→海を守るにつながっています)
SDGsとは?
エス・ディー・ジーズとは「目標」です。
ジーズはGoals、つまりわたしたちが目指す「ゴールたち」を指しています。
日本語では「持続可能な開発目標」と訳され、2015年9月ニューヨークの国連本部で採択されました。
2030年までの達成をめざす17 個の目標があり、
「no one will be left behind(誰も置き去りにしない)」がSDGs のモットーです。カッコイイ!
17個の目標はさらに169ものターゲットに詳しく細分化されています。(参照:外務省HP )
人権問題や環境問題など、いま取り組まなければわたしたちの子ども、孫の世代…と未来に直結する内容になっています。
SDGsを超簡単に説明すると
「人にも地球にも優しい世界中が目指すゴール」のこと。
富硝子デザイナーのわたくしは、SDGs的観点でガラスアイテムを企画し店頭や食卓へつなげることで
「地道ながら少しでもゴールに近づければ」と考え小樽再生ガラスを企画しました。
食器からはじめるSDGs…どんな取り組みがある?
今回は食器でできるSDGsの取り組みについて考えてみます。
突然ですが、あなたは物持ちが良い方ですか?
ひとつの食器を大切に使い続けることも、取り組みのひとつです。
例えば、100均の安価なプラスチック食器は
原油から海外で大量生産され、燃料をつかって海を渡り、お店に並びます。
わたしたちが購入したあともなかなか壊れず、いずれ劣化したり飽きたりし、
いらなくなったら捨ててしまった経験はないですか?
わたしもその1人。気に入ったものはとことん使うタイプですが、一人暮らしをはじめたばかりのころは、安価なプラスチックの食器も使っていました。
ガラスはもともと砂、灰、鉱石からできた自然素材。
紀元前から作られ、回収して溶かせば再成型できるエコな素材です。
江戸時代でも回収して再融解しリサイクルされていました。(詳しくは『江戸硝子の魅力』へ)
ひとつのものを長く使う…と言っても、ガラスには割れてしまうリスクがつきもの。
それを踏まえて大切に使うことも、ひとつの取り組みとわたしは思います。
もっと踏み込んで「環境にやさしい食器を」と思ったら、再生ガラスを使ったガラス食器はいかがでしょう?
小樽再生ガラスはSDGsに気軽に参加できるガラス食器
小樽ガラスとは、北海道小樽市で作られたガラス食器。
北海道の道内から石狩市の産業廃棄物処理業者に集まった廃車から、
手と工具で窓ガラスのみを取り外し、再融解してガラス食器にしています。
どうして再生ガラスがSDGsの目標に近づくの?
本来廃棄している資源を再び使うことで、ゴミを減らし資源を守ることにつながります。
工場にお話を伺うと、車の窓ガラスは「グラスウール」と呼ばれるガラス繊維にリサイクルし、車や建築に使われる断熱材に生まれ変わるそうです。
ただ、グラスウールはガラスを繊維化するため、リサイクルにコストがかかり敬遠されがちだと言います。
車から窓ガラスだけを取り分別することは人手もかかり大変手間ですが、
ガラスを再融解して食器にすることで、グラスウールよりも簡単にリサイクルでき、わたしたちの日常にも身近なものになります。
小樽再生ガラスがSDGsにプチ貢献する2つの理由
小樽再生ガラスを選ぶと貢献できるのには2つの理由があります。
それは、北海道ならではの立地をうまく活用した工場ならでは。
具体的にご紹介しましょう!
1.ガラスを再利用しているから
再生ガラスをつくるためには、廃ガラスが必要です。
ガラス瓶を色で分別してゴミの日に出すように、ガラスは種類によって溶ける温度(融点)が違うため、同じ種類のガラスを大量に集めることがカギとなります。
集められたのは北海道じゅうの車の窓ガラス
トミクラフトの小樽再生ガラスは、北海道から集められた廃自動車の窓ガラスを使っています。
石狩市の廃棄物処理業者さんが、車を廃棄するもの・リサイクルできるものに細かく分別し、それを小樽のガラス工場が引き取って資源としてリサイクルしています。
窓の場所で色が違う!?
トミクラフトの小樽再生ガラスには、グリーンとスモークがあります。
前の窓には視界がよく見えるグリーンのガラスが使われており、
この色は漁業で使われる浮き玉と同じカラーです。
後部座席を再利用するとスモーク色のガラスができます。
2.水を再利用しているから
ガラス窯の熱で雪を溶かし作業水へ。
ガラス製造にはたくさんの水を使用します。
小樽の工場は雪の降る立地を活かし、融雪を作業水にうまく利用した独自のシステムを採用しています。
窯の熱を利用して、屋根の雪解け水を再利用
炉の熱で屋根の雪を溶かし、地下に溜めて循環させています。
雪かきで集めた雪も、ダクトの近くへ集め廃熱で溶かして地下におくります。(雪のない夏場は、雨を使う)
ガラス加工に使う大量の水
ガラスは型を冷やしたり、口元を仕上げるときなど、たくさんの水を使います。
小樽切子をカットするときも、摩擦熱で割れないように水をかけ続けてつくります。
この工場の水道代は、加工に使う作業水はほとんど水循環システムでまかなえているため、キッチンやトイレに使う水道代で済んでしまうほどだそうです。
小樽硝子シリーズはすべて雪解け水(雨水)でつくられています
トミクラフトの小樽硝子シリーズは、すべて同じ工場で生産。工場全体で水を循環させています。
再生ガラスだけでなく、ハンドカットで模様を入れた小樽切子や、淡い色が美しい小樽硝子などラインナップも豊富。ガラス生地もカットも、すべて小樽で生産。完全なmade in OTARUです。
小樽再生ガラスでめざす6つの取り組み
ものを買うとき、生産プロセスを知ることで一歩ずつ貢献できます!
小樽再生ガラスでめざす取り組みを6つのポイントを取材から見つけました。
再生ガラスを食器素材として定着させたい
小樽再生ガラスは、自動車の窓ガラスを回収し再溶解して作ります。限られた用途でしか再利用できなかった窓ガラスに命を吹き込み、再び日常に取り入れる循環を作りたいと考えています。
個体差も楽しむ社会をつくりたい
再生ガラスは不純物が混じるため気泡が多く、色もひとつずつ微妙に違います。品質を過剰に厳しくせず、色やカタチの個体差を味わいとして楽しんでみては?
なぜ車の窓ガラス?
車の窓は鋭い破片にならないよう強化ガラスが使われています。細かく砕けるため運搬の袋も破けにくい利点があり!
運ぶエネルギーも最小限
ガラス工場と廃材供給場所が30km 圏内。輸送に使うエネルギー削減!
古い壺が最適
再生ガラスを溶かす際は、使い古した壷が適しています。融点が高く壷を痛めやすい素材ですが、使い込んだ壷は内側にガラス層ができており、壷に穴が
開くのを防いでくれます。
パッケージまでサスティナブル
個箱には「カカオミックス」というカカオの廃殻を入れた紙を使用。(取材:hara)
開発秘話
トミクラフトのデザイナーとして、小樽再生ガラスの企画はいつもと違う勉強が必要でした。SDGsが掲げる目標は、環境問題や人種差別、社会的格差、平和問題など、グローバルで多岐にわたり、読めば読むほど「こんなの達成できないよー!」と弱気になってしまう始末…。
▲目標12 [持続可能な消費と生産] 持続可能な消費生産形態を確保する
しかし!わたしのお仕事はデザインしたガラス食器で楽しい食卓のお手伝いをすること。さらにガラスはリサイクルと関係の強いマテリアル。
なにも出来ないわけがない…!
SDGsをむずかしく考えて行動できないより、学びながら富硝子にはできることがあると思い、企画しました。
小樽再生ガラスを企画しながら変化した意識
▲パッケージの案とカタログ、海で撮影も!
企画とデザインを進めていくと、いろんな気づきがありました。
小樽工場の社長にお話を伺い、再生ガラスを融かす難しさやコストの壁など、「やっぱり理想と現実はあるなぁ」と実感。
また、SDGsを頭の片すみに置いて生活していると、本や雑誌、テレビで触れる機会が増えて少しずつ身近になってきました。
例えば以前は、夕方に品数が少ないパン屋さんを見ると「欲しいパンがないな」と残念に感じていましたが、今は「フードロスを意識してるのかな」と好感を持つように。
外食するときも「地産地消」や「食品廃棄」に取り組んでいるお店の方が、入る決め手になりつつあります!
SDGsについては、まだまだ無知なところも…。
でも、再生ガラスのタンブラーを実際に使うことで確実に身近になってきています。
わたしは今ビネガージュースの炭酸割にハマっているのですが、小樽再生ガラスのタンブラーでシュワシュワと音を立てるこのグラスを眺めていると「北海道の海の側からやってきたんだなぁ」と、グリーンの爽やかな色や小さな泡が愛おしく感じてきます。
泡ひとつない完璧クリアな品質にはない「手づくりでリサイクルの吹きガラス」の良さが、このグラスには詰まっています。
まとめ
食器からできるサスティナブルな暮らしをご紹介しました。
北海道の廃自動車の窓ガラスから、ガラス食器へリサイクル…。
シーグラスのような色合いが美しく、泡や個体差の味わいを楽しみながら、小樽再生ガラスでSDGにプチ貢献してみませんか?
おすすめの小樽再生ガラス
▲タンブラーは爽快感をより感じられる、テーパーの広がりが個性的なデザイン。ビールやレモンハイなど炭酸の効いた飲み物をいっそうおいしく。
薄い口元は吹きガラスの特徴。トミクラフトオリジナル型。
▲おちょこもトミクラフトオリジナル型。たっぷり入り、小さめの高台がスタイリッシュ。吹きガラスらしい薄い口あたりがGOOD。男女問わないデザイン。
▲まるでシーグラスを連想させる、グリーンが美しい箸置き。パッケージの水彩画は小樽の海と水を表現。
▲小樽の工場・株式会社深川硝子工芸とのコラボ商品もございます
▲2024年、新色もでました。▲職人が再生ガラスを吹く様子
2021年9月23日(木) 24:00~24:45のフジテレビ系列
『FNN Live News α 』にて取り上げられました!
廃車ガラスから食器を…職人が生む循環の形
この記事を書いた人
東京・亀戸で70年以上ガラス屋をしている富硝子株式会社(Tomi Glass Co.,Ltd.)のデザイナー。富硝子はカラーチェンジグラス・トミレーベルや、江戸硝子や小樽硝子などのハンドメイドガラスなど、おしゃれで豊富なアイデアが楽しいガラス屋です。