江戸硝子-魅力-なに

江戸硝子とは?伝統の最先端を走る"粋"なデザインの 魅力に迫る

江戸硝子(ガラス)の魅力とは?

江戸硝子-うきよ-かっこいい
ブルーやピンク、紺や白。おしゃれで色彩豊かなカラー展開…。
金箔入りで豪華絢爛かと思いきや、無色透明で薄くシャープなデザインであったり…と、江戸硝子の魅力は、ひとつのイメージにおさまりません。
世界的にみてもトップクラスの人口を誇っていた「江戸」は「東京」になってからも、伝統と流行の最先端を走り続けてきました。
 
めまぐるしく七変化する街の性格に合わせて、好奇心から職人たちの向上心をくすぐり、人の技術と機械とともに発展を経てきた江戸硝子。
この記事では、人気シリーズ「江戸硝子うきよ」の担当デザイナーが、江戸硝子の魅力を紐解いてゆきます。
 
 

江戸硝子とは?

江戸硝子とは、江戸時代からの製法を守る「一般社団法人東部硝子工業会」で認定された窯元で作られた製品をいいます。
たとえ東京産のガラスでも、東京都伝統工芸品の窯元でつくられたガラスでないと「江戸硝子」と名乗ることはできません。江戸硝子を作ることができる窯元は現在、個人を除くと東京都や千葉県に6社のみ。江戸時代からの製法を継承した指定窯元のガラスを「江戸硝子」と呼び、その江戸硝子にカットで文様を施したものを「江戸切子(きりこ)」と言います。
2002年125日 、東京都伝統工芸品として指定され、2014年126日 、国の伝統的工芸品として指定されました。

一般社団法人東部硝子工業会について
東京都よりガラス製品の伝統工芸品を「江戸硝子」として指定を受けている工業会。ガラス製品産業の振興を主に、ガラスを地域ブランドとしてPRしたり、江戸硝子を製造する事業所の支援・応援を行う。毎年4月・10月に行われる「すみだガラス市」ではガラス市の売上げを福祉に寄付するなど、チャリティーセールにも力を入れている。(参考サイト:http://www.tobu-glass.or.jp/

 

江戸硝子の歴史


江戸-詳しく-ガラス
(画像:葛飾北斎の浮世絵より)
江戸硝子の歴史は、1549年にザビエルが来日した頃までさかのぼります。
ガラスを昔の呼び方で「びーどろ」と呼ぶのを聞いたことはありませんか。
「びーどろ(Vedro)」はポルトガル語で、ポルトガルからやってきた宣教師・フランシスコ=ザビエルが、メガネや鏡など、西欧のガラスを持ち込んだことが始まりです。
それから約200年後。
日本でガラスの製造をはじめたのは、大阪のほうが江戸より先でした。
長崎の商人・播磨屋清兵衛(はりまや せいべい)」が、オランダ人が長崎に伝えたガラス製法を学び、大阪天満宮の前でガラスの製造を始めたことがスタートです。
江戸硝子-歴史-わかりやすい
またたく間にガラスの製法は江戸にも伝わり、
日本橋では加賀屋久兵衛が、鏡や眼鏡、
浅草では上総屋留三郎が、かんざしや風鈴等の製造・販売をはじめました。
 
大阪のガラスは豪華なカットのある高級志向なものが多かったのに対し、
江戸では日常的で暮らしに寄り添うガラスが発展しました。
 
江戸でガラスが身近になったのには、
江戸ならではの2つの理由があります。
 
高い人口密度
江戸が当時世界的にみても人口密度の高い都市だったので、
リサイクルに向いており、ガラスが割れても回収して加工してまた製造できたこと。
 
発展した運河
運河が発展していた江戸はガラスの重い原料(たくさんの砂)を、舟で運びやすかったからです。現代でも墨田区、江東区、江戸川区などにガラス屋さんが密集しているのは、川っぺりで原料を運んだ歴史の名残があります。
 
江戸時代当時のガラスはとても割れやすかったらしいです。
「火事と喧嘩は江戸の華」という言葉から想像されるように、
活気ある江戸っ子がガシャガシャ割る姿が目に浮かびます…。
 
しかし! 江戸は何といっても100万都市。
割れたガラスも集めればたちまち資源になります。
 江戸-ガラス-リサイクル
割れても回収し、窯で溶かしてまた再生することで、ガラス製の道具が江戸の人々に根付いたのでしょう。
今思うと、リサイクルの最前線ですね。
 
ここから江戸硝子は、古代からの技法「吹きガラス」とはすこし違った近代化を遂げます。
 
富国強兵政策のひとつとして、明治政府が「品川硝子製作所」を設立し、
海外からの技術が導入され、工場としての稼働が始まりました。
この頃、除冷炉(じょれいろ)の機械化やハンドメイドの切子加工が伝わったといわれています。
その後、品川硝子製作所は民間に払い下げられ、そこに勤めていた職人たちが、下町に工場を建てたことで、東京の地場産業として江戸時代より近代化&パワーアップして栄えました。
一時は100社近くガラス屋さんがあったそうで、氷コップや薬瓶、電球用のガラスなどが作られていました。
 
関東大震災と、第二次世界大戦で下町のガラス工場は壊滅的な被害にあいましたが、
戦後の復興に闘志を燃やし、多くの工場が再建されました。
 
 

江戸硝子の美しき配色

江戸硝子-おしゃれ-青
江戸硝子には透明なガラスのイメージを変える、
しっかりと色の濃いものがあります。
 江戸硝子-色-きれい
素材である「ガラスのたね」そのものはクリアなのですが、
たねを取ったあとに付ける「パウダー」で深い紺色を出しています。
パウダーでベースの紺をつけたあと、さらに「色粒」に黄色や水色、白を混ぜることで、まるで天体写真のような、深いブルーが表現できます。
 
 江戸硝子-色-ちがい
また、1つずつ手作りであるため、色の出かたやフォルムがひとつとして同じにならないことも、江戸硝子の魅力です。
それぞれ個性があります。
よく見ると、口元もフニャっと波打っていたり、
高さがミリ単位で微妙に違ったりと、完璧じゃないところもまた良いのです。
大量生産向きの、全自動(オートメーション)の機械ではこの個体差は狙っても出せませんから、やはり人の手が加わる、半人工(はんじんこう)ならではの味わいです。
 
 
 江戸硝子-かわいい-花箸置き
わたしが使っている江戸硝子うきよシリーズの花箸置きは、一部分透明になっていて、フォルムもなんだか歪んでいるけれど、そこが気に入っています。
同じ商品をお店で見つけても、「自分の持っているのが一番かわいい!」と思えるのは、
使っているうちに愛着がわいてくるからでしょうか。
江戸硝子-かわいい-箸置き
うきよ/花箸置き/みぞれ/EG016-14
 
 
 
 
江戸硝子は和のテイストにとどまりません。
自由な発想でカラーリングされたものもあります。
江戸硝子-かわいい-トロピカル
江戸×トロピカルをかけ合わせた、「えどぴかる」シリーズ。
かき氷のシロップカラーをイメージしており、
取説に添えられた、歌川広重もびっくりの南国トロピカル調浮世絵風イラストも最高です。
 江戸硝子-おしゃれ-レモン
同じシリーズのタンブラー。夏に、レモン味のスポーツドリンクを入れてみました。
レモンスカッシュ、レモンチューハイ、レモンティー…。とにかくレモンが入っていれば、たいてい似合います!
えどぴかる/六角タンブラー/レモン/EG017-02
 
 
 
 

[製法工程]江戸硝子はこうして作られる

東京-下町-工場 
江戸硝子にはさまざまな製法があります。
 
「吹く」 棹にガラスのたねを巻き取って吹く、観光地で教室などもある、一般的にイメージされるガラスの製法です。「宙吹き」と「型吹き」があります。
「伸ばす」 ガラスのたねを平たい版に伸ばして、厚めのお皿などをつくる製法です。
「押す」 プレス成型と呼ばれ、凹んだ型にガラスのたねを入れ、凸型で押し込む製法です。醤油さしの栓や、お皿などに使われます。
「圧迫する」ガラスのたねを特別な型に入れて、中で圧縮空気を入れながら形を作ります。瓶や一輪挿しに用いられる製法です。
「流す」 ガラスのたねを型に流しいれて成型します。ガラス製のトロフィーやペーパーウエイトに使われる製法です。
「回す」 スピン成型と呼ばれ、ぐるぐると高速回転する型にガラスのたねを落とし、遠心力で成型する製法です。
 
ガラスのたねは、炉の中の「猫つぼ(るつぼ)」に入っています。
1400℃で溶かされたガラスのたねを、金属製の棹で、職人が巻き取ります。
りんご飴の煮詰めた飴で150℃くらいですから、1400℃が火傷で済まない熱さだということは、想像できますね…。
成型したてのガラスは、はじめは真っ赤ですが、薄いものですと数分立つとだんだん完成した色に近づきます。
しかし、そのまま常温で冷ますと、急激な温度変化で勝手に割れてしまいます。
触れもしないガラスが突然割れると、まるで心霊現象のようでビビりますが、ほぼ温度差のせいです。
 
熱々の成型後は、「除冷炉」という窯に入れて、ゆっくり時間をかけて温度を下げてゆきます。
 
1人でできる製法は「宙吹き」くらいで、あとは基本3人1組で、「ガラスのたねを巻く人」「型にガラスを切り落とす人」「除冷炉に運ぶ人」と1個の江戸硝子をつくるために3人の職人が携わっています。
大鉢や、ガラスのトロフィーになれば、チームの人数はもっと必要となります。


おすすめの江戸硝子ブランド

さて、ここからはおすすめの江戸硝子のブランドを紹介したいと思います。
わたしたちが企画・デザインし、東京都墨田区にある江戸硝子の窯元・岩澤硝子で生産されたTOMICRAFT(トミクラフト)です。

うきよ-富硝子-江戸硝子


https://tomi-glass.online/collections/tomicraft
TOMICRAFT(トミクラフト)は富硝子株式会社の国産ハンドメイドブランド。
江戸硝子のシリーズは、東京・亀戸で70年以上ガラス問屋をしている富硝子株式会社がデザインし、江戸硝子の窯元・岩澤硝子株式会社が製造しています。
WAY仕様の箸置きや、江戸の暮らしを現代解釈したカラー名、ガラスの底を大胆に切削カットしたきわみシリーズなど、アイデアが豊富で楽しい展開となっています。
江戸硝子うきよ」シリーズ
江戸の文化をテーマに、江戸時代の人々が愉しんだ四季の移ろいや「粋」「ハレ」など当時の人々が大切にしていたマインドを、カラフルな配色で現代的に表現したシリーズです。
江戸硝子うるし」シリーズ

江戸硝子にうるしを塗った、日本の職人の技術が詰まったシリーズです。

江戸硝子きわみ」シリーズ
金箔入りの江戸硝子の底を、職人がカットした、富硝子オリジナル商品です。
高級な切子より、身近に職人技を感じてもらえるよう、親しみやすい伝統工芸品を目指して作りました。
カットがない「金箔のみ」も展開中。
江戸硝子-素敵-さわやか
きわみ/吟醸/花すいてん/eg020-1
江戸硝子えどぴかる」シリーズ
「もし江戸にリゾート文化がやってきたら…?」をテーマに、ユニークなイラストや「ラムネ」「マンゴー」など、かき氷をイメージした色名で展開しています。
江戸硝子えどふぇありー」シリーズ 
まるで妖怪のようなネーミングで、おとぎの国をテーマにメルヘンチックなイラストや「てんぐ」や「かっぱ」などユニークな色名で展開しています。
江戸×妖精の世界観をミックスした、Tomi CRAFT(トミクラフト)らしいワクワクするシリーズです。
ガラスの中には、異なる2色のガラスパウダーと、白いガラスの粒が練り込まれており、グラデーションが白によって映えるデザインにしました。

 

 

まとめ

 「江戸硝子」と聞くと、どうしても「赤!青!カットが入った江戸切子」と、伝統的な切子(きりこ)の方を思い浮かべがちでしたが、最近の江戸硝子(ガラス)の世界は、カラフルでスタイリッシュな色や形が定着しつつあります。
自由な発想とカラーリングで、いまもなお進化している江戸硝子。
富士山の形をしていたり、薄かったりカラフルだったりと、
伝統を守りつつも、時代に合わせて姿を変える江戸硝子。
 
明治時代に、アイスやかき氷を食べるための「氷コップ」が、ハイカラなステータスだったように、
江戸(東京)という流行に敏感な街で作られるガラスだからこそ、
幅広いデザインが魅力的なのだと、わたしは考えています。
 
江戸硝子は、現代人の感覚に合うモダンな商品展開で、今後もますますmade in TOKYOの先陣を切ることになりそうな予感です!
 

Tomi CRAFTのすべての江戸硝子はこちら

 

この記事を書いた人
東京・亀戸で70年以上ガラス屋をしている富硝子株式会社(Tomi Glass Co.,Ltd.)のデザイナー。富硝子はカラーチェンジグラス・トミレーベルや、江戸硝子や小樽硝子などのハンドメイドガラスなど、おしゃれで豊富なアイデアが楽しいガラス屋です。

当店:トミガラス公式オンラインショップ

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Text,Photo,Illustration:Okanami
2024.06.11追記
 
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