オパールガラスをご存知ですか?
ミルクガラスのような乳白色と、透明感を合わせもつアンティーク感漂うガラス。
この記事では、オパールガラスの歴史や素材を紐解いてゆきます。
似た名前のオーロラグラスとの違いや、おすすめのオパールガラスの食器についてもご紹介してゆきます。
オパールガラスとは
「オパールガラス」は半透明なガラスです。
ケイ素・ソーダ灰・石灰からできた、窓ガラスやびんに使われている「ソーダガラス」の一種ですが、そこにリン化合物が加わっています。
そのため、宝石のオパールのように
光の強さや見る角度でピンク、ブルー、オレンジなど、ぼんやり虹色に光彩します。生産時に熱が加わるほど乳白色で不透明になるのが特徴です。
ティファニーが開発したという説も…。
ルネラリックも愛したオパールガラス
アール・デコを代表するガラス工芸家として名高いフランスのルネ・ラリック(1860-1945)の作品には、オパールガラスを素材として使った作品が多数あります。
なかでもわたしが好きなのは彫像『スザンヌ』(1925年)です。この作品は、布をまとった裸婦像です。全体的にぼんやりと発光しているような女性の姿は、熱で乳白色と透明を左右するオパールガラスならではの表現。光の具合で見え方が変わり、とても美しいです。
こうして、ラリックのつくる香水瓶、花瓶、置時計、テーブルウェア、アクセサリーなどのオパールガラスのガラス工芸品は、非常に高価なものとして重宝されてきました。
美術やアンティークの世界では「オパルセントガラス」「オパールセントガラス」とも呼ばれています。
貴重な日本のオパールガラス
日本にオパールガラスがどうやって来たのかはわかりませんが、大正時代の骨董品をのぞくと、オパールガラスのインテリア雑貨が多く登場します。
ランプシェイドや瓶、カップ、グラスなど親しみあるものばかり。
ガラス工業の世界では、オパールガラスは、生産しやすい調合に繰り返し改良されてきたようです。
しかし、オパールガラスは透明のガラスとちがい、生産するたびに窯の中の壺を交換しなければなりません。
壺をまるまる使うほど多くのロットを必要とするうえに、近年の海外製品との価格競争の問題…さらには
ベテランのガラス職人による温度の感覚も必須な素材のため、作るハードルが高くなってきています。
現在日本でオパールガラスを生産している工場は、指折り数えるほどしかありません。日本製のオパールガラスは年々、貴重なものになってきました…!
さて、ここまではオパールガラスの素材や歴史に触れてきました。
ここからは、よく雑貨店で目にする、虹色のガラスとの違いを説明してゆきましょう。
オパールガラスとオーロラグラスの違い
100円均一や300円均一などの量販店で最近見かける、虹色でカラフルなグラスをご存じでしょうか?
「オーロラグラス」や「オパール色グラス」などと呼ばれています。
オーロラ色のグラスは、クリアのガラスにオーロラのようなパール色のインクを全体的に吹きつけてつくられています。ガラスのプリント加工の「塗装」の一種です。
オパールガラスとの違いは、成分がそもそも違います。オパールガラスはオパール色に発色するよう調合されたガラスのため、割れた断面も乳白がかったオパール色ですが、オーロラグラスはクリアのガラスに色をのせた製法のため、断面はただのガラス色です。
長年の変化
オーロラグラスは硬いスポンジで洗ったり、長く使うと擦れた部分の色がはげてしまいますが、オパールガラスはそのままです。
手ざわりの違い
オーロラグラスはインクの樹脂成分によって、やや爪に引っかかるような質感があります。しっかり持てる印象も。オパールガラスはふつうのガラスと同じように、ツルツルです。
オパールガラスの美しさとは?
ガラスのたねからオパール色に調合された、不思議なガラス。
ここからは、オパールガラスの魅力をさらに深掘りしてゆきましょう!
オパールガラスの色
オパールガラスは、調合するときにピンクやブルーを加えて、色味を出すこともできます。当ショップで取り扱っているTomi label TOKYOは、ホワイト、ピンク、ブルーで展開していますが、基本的にはホワイトがメジャーです。
ブルーやピンクのオパールガラスは珍しい!
ブルーのオパールガラスを色の違うテーブルへ置いてみた
突然ですが、お宅のテーブルは何色でしょうか?オパールガラスは置いた場所で見え方が変ります。
このガラスは、生産時に熱がたくさん加わった部分が乳白色になる特性があります。温度が高すぎて全体的に真っ白になってしまわないよう、職人たちがひとつひとつ調整しているのです。
その濃淡の良さが、上の写真には出ています。テーブルの色が濃いと、乳白色の部分と透明な部分がはっきり明解です。また、テーブルが白っぽいと、ふんわりとガラスそのものの色味を感じられて美しい…。
お皿の下に敷くランチョンマットやトレイを変えてみるのもいいですね。
自然光と蛍光灯のもとで違う色に…?
オパールガラスは、不思議なことに部屋の中と外で色が変化して見えます。
太陽光のもとでは、透明感があり、影にオレンジ色を含んだ見え方。対して、蛍光灯のもとでは、青白くガラスそのものが発光しているような色に見えます。
お宅の食卓が、もし窓に近ければ、朝と夜で器の印象が変わるのも、このガラスならではの面白さです。
オパールガラスが逆光のとき
上の写真をご覧ください。左はクリア、右はホワイトのオパールガラスです。どちらも逆光の状態ですが、影に注目。オパールガラスの方は、温かみのあるオレンジ色に光彩しています。
これはリン化合物がガラスに添加されているためです。ガラスの中のリン化合物が作る粒子の大きさが、ちょうど光の波長に近い ため、光の具合によってこのように見えそうです。(参考:http://www.glass-kougeihiroba.jp/arekore/index18.html)
さまざまなシーンのオパールガラスを使った食卓
オパールガラスのブルーのプレートと、オレンジ&ローズマリー。爽やかな色で日常使いしやすいです。フルーツや、サラダやワンプレート料理に使ったり、カルパッチョやケーキなど和風にも洋風にも合わせやすいデザイン。
深みがあるボウルは、フルーツやサラダ、シリアルがたっぷり入ります。
和風にも洋風にも合わせやすいデザインです。
日本の職人がつくるオパールガラス「パルレ」シリーズ
Tomi label TOKYOにはオパールガラスを使った「パルレ」というシリーズがあります。福島県郡山市のガラス工場がまだ東京にあった頃に生産した、ガラスボウルとプレートです。
まとめ
オパールガラスは写真もきれいですが、実物の光の表情や乳白のゆらぎは、使うほどに愛着がわいてゆきます。
温度に左右されやすく大量生産に向かない素材なので、作るメーカーは非常に少なく、このガラス食器も再生産がむずかしい、貴重なアイテムとなってきました。当ショップも、倉庫在庫がなくなり次第、販売終了です。
国内ガラス工場で生産されたオパールガラスの良さを、Tomi label TOKYOのガラスアイテムでおたのしみいただけますと幸いです!
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青いオパール
オーロラのラスター
この記事を書いた人
東京・亀戸で70年以上ガラス屋をしている富硝子株式会社(Tomi Glass Co.,Ltd.)のデザイナー。富硝子はカラーチェンジグラス・トミレーベルや、江戸硝子や小樽硝子などのハンドメイドガラスなど、おしゃれで豊富なアイデアが楽しいガラス屋です。