透明で美しいガラスの食器。
そんなガラスの一番のウィークポイントといえば…ズバリ!割れてしまうこと!
プレゼントやお祝いでいただいたグラスや、お気に入りのグラスが割れてしまったこと経験がある方も多いはず。わたしも経験者ですが、心のダメージがかなり大きかった記憶があります。
割れたグラスは修理できる?
お客様からよく「記念のグラスを割ってしまったのですがなんとかならないでしょうか?」といったお問合せをいただく事があります。
大変心ぐるしいのですが、一度割れてしまったガラスは、私たちガラスのプロでも元の姿にもどすことは不可能です。
金継ぎで直したり、削って磨きなおしたり…と、小さな破損に対応できるケースもあるようですが、当店では残念ながら、割れたガラスの修理は承っておりません。
写真のように、サンプル品が欠けてしまった場合は、セロテープを何重にも貼って補強したりします。
…ですが、その儚さが、ガラスの良さでもあると考えています。
割ってしまった時に正しくガラスを処理することはとっても大事。
ケガをしないように、破片を残さないように安全に捨てる方法を一緒に確認していきましょう!
グラスが割れちゃった!あなたがすべきファーストアクションは?
ガラスのプロだからこそできるアドバイス…それはとにかく慌てないこと!そして、焦って触らない事が1番です。
ここからは、実際に割れてしまった直後の行動をおさらいしましょう。
準備する道具、スムーズかつ安全に行う処理方法とごみの出し方から、その行方…と順を追ってご紹介します。
正しい方法を知って、いざという時に落ち着いて行動しましょう!
ガラスを割ってしまったら、あわてず動かないで
まずは、落ち着いて、あわてない事が一番。
あたふたしがちですが、その焦りから素手で触ってしまうことでケガをしてしまうことも。
中身がこぼれてしまった場合もまずは破片の場所を目でチェック。
特に、小さなお子様やペットなどがいるご家庭では、片づけが終わるまで一度別室に避難させることをお勧めします。
「片づけ開始!」のその前に!必要なもの、準備するもの。
片づけに必要なものをそろえます。
まずは、スリッパをはいて足元の安全を確保!
道具を取りに行くまでに、破片が散らばった床を歩いてケガをするかもしれません。
準備するもの
- 軍手
- スリッパ
- 新聞紙
- ビニール袋
- ほうき
- ちりとり
- 掃除機
- 破れたストッキング
- ガムテープ
- コロコロ
処理方法
①軍手をはめ、大きな破片を拾い、広げた新聞紙の上に集める
②掃除機にストッキングを装着して小さな破片を吸い取る
ポイント
ストッキングを使えば掃除機を守れる
掃除機のヘッドを外し、ストッキングかぶせ、輪ゴムで固定します。サイクロン式掃除機などの本体の故障を防ぐことができます。
目にそって吸うとより安全
畳やフローリングの溝に入り込んだ破片も吸い取る事ができます。
スイッチを切るタイミングがコツ
ストッキングに集まった破片は、スイッチをオンにしたまま、吸い込み口を新聞紙の上に持ってゆき、破片を落とす場所に狙いを定めて、オフにします。
こうすると、ストッキングに付着した破片も床に落ちてしまうことも防げます。
水拭きでふき取る
目に見えない細かい破片をぞうきんや濡れた新聞紙などでふき取ります。ラグやカーペットなど布製で水拭きができない場合は、粘着性のあるコロコロで取り除きましょう。
ガラス類のごみの出し方
地域により分類やごみ出しの方法が違う場合もあるので、自治体の情報を確認してルールを守り、正しく処分しましょう。
瓶は一般的にリサイクルとして分別ごみに出しますが、
一般家庭で割れたガラスは、リサイクル用ではなく「不燃ごみ」として扱われることがほとんどです。
ガラスごみを扱う人の安全を考える
割れたガラスをそのままビニール袋にいれるととても危険です。
ガラス片や割れた食器などは、厚手の紙(重ねた新聞紙など)に包み、「キケン」とマジックでわかりやすく書くと安全です。
自分も、家族も、ごみ収集の方にとっても安全にケガをしないよう配慮しましょう。
※上記は江東区の「ガラス類」の捨て方です。具体的な方法は、お住まいの地域のごみカレンダーをチェック!
ガラスのごみはどこへ行くの?
東京都の場合、コップなどの割れてしまったガラスのゴミは「埋め立てゴミ」として収集され、細かく粉砕し東京港近くの不燃ごみ処理センターに運ばれます。(引用:東京23区のごみ処理より)
なぜ瓶はリサイクルゴミで、食器は埋め立てゴミなのか?
それは「耐熱ガラス」「ソーダガラス」「クリスタルガラス」…と作られたときの成分がバラバラなので、ふたたび溶かすと有害物質が出るおそれがあるからです。
ただ、食器ブランドトミクラフトの江戸硝子を作っている工場では、この工場内で割れた透明のガラスは捨てません。
新しいガラスを調合するときに、わざと混ぜています。
この割れたガラスは「カレット」と呼ばれています。あまり知られていないですが、江戸硝子の工場では昔から当たり前に再利用している工程です。
生産もとがはっきりとわかるガラス食器を選ぶことも、遠回りでもゴミの減少につながっています。
まとめ
「割れてしまうから」と、プラスチックやメラミン樹脂のコップをお使いになる方もいらっしゃるかもしれません。落としても割れず、とても便利ですよね。お子様がいらっしゃるご家庭は特にそうでしょう。
近年は、「ガラス食器は割れるから子どもに使わせない」…という考え方から少し発展してきています。
「割れてしまうから大切に使おう」とものの大切さを覚えたり、
「ガラスのコップだと、ジュースを美味しく感じるかも…?」と質感と味の関係を体感してもらうなど、食育の場にエッセンスを与えています。
ガラスは割れるリスクもありますが、においがつかず清潔で、くちあたりを良くしてくれます。
夏のガラス器に盛りつけた料理は食欲を与えてくれ、光が当たったときの輝きはガラス素材ならではです。
「割れた時」を考えて使わないよりも、ガラスの魅力を楽しみ、味わっていただけましたら幸いです。
そして、割れたときの対処法を知っていれば、いざとなったとき焦りません。
地震や災害後も、道具を用意して安全に処理できます。
ガラスが割れたときは、まずは落ちついて、ぜひ、この記事の内容を思い出してみてください。
▲オリジナルデザインの耐熱ガラス。雲の上でお茶をする『メアリーポピンズ』の世界観を表現。ゆったりしたモールが個性的で上品なデザインに仕上げました。
▲車の窓ガラスをリサイクルした小樽再生ガラス。グラスにもサスティナブルな意識を。
▲当社オリジナルブランドの「江戸硝子うきよシリーズ」はまめ皿が人気。
▲液だれしにくいガラスの醤油差しもおすすめ。
富硝子株式会社(トミガラス/Tomi Glass Co.,Ltd.)
本社は江東区亀戸(かめいど)。
江戸硝子や小樽硝子などのハンドメイドガラスから、プリントにこだわったグラス・トミレーベル、耐熱ガラス、ガラスのトロフィーなど、おしゃれで豊富なアイデアが楽しいガラス屋です。
Text:macky
Photo、illustration、editor:Okanami