クリスタルとガラスの違いって?音や輝きで見分ける方法

クリスタルとガラスの違いって?音や輝きで見分ける方法

「クリスタル」とよく耳にしますが、ガラスもアクリルも「クリスタル」と呼んだりしますよね。この記事では、「クリスタルとは何なのか?」「見た目でクリスタルとふつうのガラスと見分けられるのか?」を当ショップ・トミガラスの視点で深掘りしてみましょう!

 

クリスタルって何?クリスタルガラスとは?

クリスタルガラス-ガラス-違い

「クリスタル」とはキラキラ輝くものを意味し、ガラスもアクリルも鉱石や水晶も、素材に関係なく一般的に「クリスタル」と呼ばれています。
ガラス食器の業界では、鉛を含むガラスを「クリスタルガラス」と呼んでいました。そのため、ガラスによって細かく定義されています。
(専門的な定義はのちほど説明しますね!)

「クリスタルガラス」とは、現在では音の響きが良く、透明で輝く高級なガラスを総じて「クリスタルガラス」と呼ばれています。

さて、一般的には素材も定義もあいまいなクリスタルガラス。
あなたはたくさんある透明な食器から、クリスタルガラスがどれか、見分けることができますか…?

 

クリスタルガラスの見分け方

ソーダガラス-クリスタルガラス-どっち

例えば、目の前に2つのコップがあって、どちらがクリスタルで、どちらがふつうのガラスでしょう?

これはガラス屋のわたしたちでもなかなか難しいクイズです。
答えは………、左がクリスタルガラス!

写真右はふつうのガラス。専門的には「ソーダガラス」と呼びます。

プロでも写真だけで見分けるのはほぼ不可能かも…。

ここからは、もし実物が手元にある場合、わたしたちはクリスタルガラスとソーダガラスをどのようにして見分けているのか、実際に試してみましょう!

 

音:乾杯したときの音は?

 

↑ぜひスピーカーをONにして聞いてみていただきたい…!
クリスタルガラスは、乾杯すると「コーン…」という、響くような美しい金属音がします。

一方、ソーダガラスは「チンッ」と短い音がします。
これが一番、見分けがつきやすいです。ただ「高級なクリスタルガラスの音」を知っている必要があり、経験値が必要です。

 

色:ガラスは何色?

クリスタルガラス-透明感-ちがい

クリスタルガラスは、無色透明です。透明度が高いので、映り込みもクリアになります。写真左では、空や窓枠がはっきりと映り込んでいるのがわかります。

一方、ソーダガラスは少し青緑がかっていたり、灰色っぽい色がややあり、ガラスの色が影響して、写真右のように空がぼやけたり、筋のようなものが見受けられ、映り込みもぼんやりしています。

 

輝き:太陽光でよりキラキラするのは?

太陽光-クリスタルガラス-輝き

クリスタルガラスは、光の屈折率が高く、輝きが美しいです。写真左のように、虹色の光彩を発見できます。プリズムが見えることも。影もクリアでキラキラます。

一方、ソーダガラスも影はキラキラしますが、虹色は見つけにくく、輝きはクリスタルガラスと並べるとやや劣り、比べると影もぼんやりと感じます。



このようにクリスタルガラスとソーダガラスは、原材料が異なるため、音、色、輝きの特性に違いがでます。

 

クリスタルガラスには、酸化鉛や亜鉛やバリウムなど金属系の化合物が含まれているため、輝き音の響きに優れ、高級感があり、重たいです。一方、ソーダガラスは、ソーダ灰と石灰石などを原料としたもので、うっすらと緑や灰色をしていて、型の跡があったり、軽い特性があります。


わたしたちも、実物が手元にあるけれど、情報がない場合は、このようにして素材の憶測を立てることができます。

しかし鑑定士ではないので、断定はできないもの。
しかも、近年は各社の努力でソーダガラスでも透明感や品質に優れたものも多く、モノだけで見分けるにはかなりの経験値が必要です。

そのため、お客様に伝えるときは、メーカーに問い合わせ、確認しています。

 


「クリスタルガラス」の定義

 
写真:レタードクリスタル / シェルブルー

みなさんはクリスタルと聞くと「輝くキラキラしたかたまり」をイメージしますか?

リアルだけでなく、ファンタジーのゲームや映画の中でもクリスタルは宙に浮いてキラキラと輝く鉱石のような存在です。

ただ、現実世界では、ガラスもアクリルも鉱石や水晶も総じて「クリスタル」と呼ばれています。そのため、それぞれの素材によって細かく定義されています。

 

さてここからは、ガラス素材での「クリスタル」は、どのような定義分けされているのか、ガラスのプロが解説します!

 

クリスタルガラスとは?

透明度が高く、キラキラ輝き、音の響きが良いガラスは「クリスタルガラス」と呼ばれています。

かつては「鉛ガラス」とも呼ばれ、18世紀に生まれたクリスタルガラスは、輝きを出すために鉛が成分に入っていました。

現在は酸化鉛の毒性が問題視され、環境に害が無い、鉛フリーの亜鉛やバリウムを使ったものが登場しています。これらも同じくクリスタルガラスと呼びますが、クリスタリンやセミクリスタルガラスとも呼ばれています。

 

ガラス屋にとってのクリスタルガラスとは?


ガラスメーカーの会話で「素材は?」と質問し「クリスタルです」と答えがくると、次の質問はたいてい「鉛は入っていますか?」と続きます。

ガラスのプロフェッショナルなら、クリスタルガラスと聞くと、頭の中で「鉛を含むもの・含まないもの」の2つに分けられます。

さらに、日本のクリスタルガラスは、以下の4つに定義されています。

 

酸化鉛を含む

1.full Lead Crystal(フルレッドクリスタル)
酸化鉛の含有量が30%以上のクリスタルガラスです。最高品質のクリスタルガラスで、光沢があり、重みがあり、美しい音色が鳴ることで知られています。

2.Lead Crystal(レッドクリスタル)
酸化鉛が24%〜30%未満、含まれているものです。

3.Semi-Lead Crystal(セミレッドクリスタル)
酸化鉛が10%〜24 %未満、含まれているものです。

 

酸化鉛を含まない

4.Crystaln(クリスタリン)
酸化鉛の代わりにバリウムや亜鉛などの化合物を入れて開発された、環境にやさしいガラスです。メーカーによって呼び方が違い、セミクリスタルなどとも呼ばれます。クリスタルガラスの中で最安価ですが、ふつうのソーダガラスに比べると、ぐっと高級感があります。近年は高品質なものも開発され、酸化鉛入りに劣らない美しさや透明度を持つものも出てきました。

 

「鉛」って、体に悪くないの?

結論から言うと、鉛は体に悪いですが、日本のメーカーが販売するクリスタルガラスは安全です。

これまでの解説で、「レッド」が名前につくガラスは酸化鉛が10%以上入っているガラスだとお伝えしました。

日本では、酸化鉛を含んだクリスタルガラスの生産には厳しい規制が存在しています。

さらに、日本のメーカーが海外から輸入して販売する商品は、食品衛生法の検査で鉛の基準をクリアしたもののみがお店に並ぶようになっています。

一方で、骨とう品やフリマサイトなどでの個人輸入やネット販売の海外製クリスタルガラスは、製造年代によって鉛の含有量が異なる可能性があるため、注意が必要です。

クリスタルガラスを買うときに、製造年や商品の情報を確かめて、鉛の含有量が安全基準を守っているかを確認することが大切です。信頼できるお店や情報源から買うことをおすすめします。そうすることで、安心して使うことができますよ。

 

なぜ鉛を入れるのか?

輝きで高級感を出す目的の他に、切子や切削などの加工がしやすいためです。シャンデリアなど装飾的なデザインをするためには、ガラスが柔らかい必要があるため、酸化鉛を入れます。

 

クリスタルガラスの歴史

クリスタルガラス-イラスト-アンティーク
17世紀のイギリスで、ソーダ灰の代わりに酸化鉛を加えることにより、無色透明で美しいクリスタルガラスが発明されました。ワインのデキャンタやワイングラスなど様々な形が考案されたといわれています。

しかし、酸化鉛は製造工程で、人体や土壌汚染への毒性が懸念され、ヨーロッパから規制が始まり、日本でも食器用ガラスの酸化鉛を生産する工場では厳しく規制されるようになりました。

そのため、現代のガラス食器の鉛を、過剰に恐れることはありません。

アンティークや骨董品で手に入れた素材のわからないクリスタルグラスに「長年、長時間お酒を保管した後に飲む」などしなければ、ふだんの生活では問題ないでしょう。 

 

 

現代のクリスタルガラス

現在では、鉛の有無に関係なく、キラキラ輝くガラスを総じて「クリスタル」と呼ばれるようになりました。
当ショップを運営する富硝子株式会社も「レタードクリスタル」というブランド名で、ガラスのオーナメントやジュエリートレイを展開しています。
このガラス素材は、レンズなどに使用される光学ガラスが使用されています。

レタードクリスタルに使用されているガラスは、全て鉛フリー(鉛が入っていない)クリスタルガラスです。
レタードクリスタル
 creemaサイトへ



当店でおすすめのクリスタルガラス

ここからは当店で発売中のおすすめクリスタルガラスをご紹介します。

 

インクリスタルタンブラー
セミレッドクリスタルなので、透明度と輝きが段違いで美しいタンブラーです。側面のモール(縦線)が特徴でエレガントなつくり。お水やビールなどのふだん使いから、来客用にも。

 

ショット ツヴィーゼル/チャームワイン
セミレッドクリスタルのワイングラス。乾杯したときの"コーン"というクリスタルらしい深みのある音が特徴で、全体的に繊細なつくりが美しい。

 

ショット ツヴィーゼル/チャームフルート
セミレッドクリスタルのフルートグラス。口元は薄づくりなため、スパークリングの味がいっそうよく感じられます。

 

小樽切子
こちらは24.5%のレッドクリスタルを切子しています。生産地の小樽の工場では、酸化鉛を安全に処理するシステムを持っています。

 

リング/ワイン/ゴールド
酸化鉛を含まない、クリスタリン。スラッとした印象の台座が美しいワイングラス。口もとの金は東京のガラス職人が1点ずつ手作業で巻いています。

 

シェネ
酸化鉛を含まない、クリスタリン。パールのラインストーンが印象的なワイングラス。クリスタリンでできています。

 

 

まとめ

クリスタルガラスの定義と、ソーダガラスとの違いを解説してみました。

ガラスに詳しい人でないと「昔のクリスタルガラスに鉛が含まれていた」なんてこと、なかなか知らないかもしれません。

さらに、鉛が入っていないクリスタルガラスもあるなんて、

「クリスタルガラス」が総称なだけに、一言では説明できない、ややこしい…!!

クリスタルガラスは高級で高価な一方で、音・色・輝きに優れ、ソーダガラスは丈夫で安価な一方で、輝きや透明度が劣ることがわかりました。

おうちにある古いグラスの素材がわからないときに、乾杯の音や、輝きで見分ける方法を試すことで、お役に立てると光栄です。
ただし、売り物やレストランのグラスを叩くのはやめましょうね。

 

現代は技術も向上し、ソーダガラスでも高品質で透明なものがたくさんあります。
どんなグラスでも、ピカピカに磨いて大切に使うことで、愛着が沸くものです。

ぜひ、当ショップのクリスタルガラスも、のぞいてみてください。

この記事を書いた人
東京・亀戸で70年以上ガラス屋をしている富硝子株式会社(Tomi Glass Co.,Ltd.)のデザイナー。富硝子はカラーチェンジグラス・トミレーベルや、江戸硝子や小樽硝子などのハンドメイドガラスなど、おしゃれで豊富なアイデアが楽しいガラス屋です。

当店:トミガラス公式オンラインショップ

Text,Photo,Illustration:Okanami
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