冷たい飲み物を注ぐと、ガラスの模様があらわれたり色が変わる
カラーチェンジグラスをご存じですか?
この記事ではガラス屋のマニアックなガラスインクの仕組みから
カラーチェンジアイテムの紹介、取扱の注意点をご紹介します。
カラーチェンジグラスとは?
カラーチェンジグラスとは、 冷たい飲み物を注ぐと柄の色が変化するグラスのこと。
常温では白っぽい乳白色の絵柄が、冷たくなるとピンク、ブルー、グリーンなどインクの色に合わせて発色します。
外気温にもよりますが、約14℃で反応が見られ、氷水や真冬の寒い部屋でも反応して色づきます。ガラス本体の色が変わるわけではなく、カラーチェンジするインクの部分のみ、色が現れます。
なぜガラスの絵柄がカラーチェンジするの?
なぜ絵柄が変化するかといいますと、カラーチェンジグラスには、特殊なインクが使用されているためです。
インクが温度に反応することでカラーチェンジします。
特殊なインクは「感温インク(かんおんいんく)」と呼ばれ、
身近なものでは適温を示すジュースやアイスのパッケージ、技術を応用してつくられた「こすって消えるボールペン」も感温インクの仲間です。
ガラス食器には主に「コールドタイプ」のインクが使われており、氷水や真冬の寒い部屋でも反応して色づきます。
温度で色が変わる感温インクのヒミツ
感温インクを超拡大して見ると、小さなカプセルに感温インクが満たされているようなイメージです。
インクで満たされたカプセルが、冷たい温度に反応して色が変わることで、プリント部分がカラーチェンジします。
ガラスに模様をプリントするときは「シルクスクリーン」を使います。
シルクスクリーンとは、メッシュ状の版にあなを作り、あなの部分にだけインクを落として印刷する印刷方法です。(孔版画)
感温インクはカプセルが通る穴のサイズにしなければなりませんので、メッシュは必然的に粗くなります。通常のガラスインクよりも粗いメッシュになるため細かい絵はインクがあなを通れず、かすれてしまいます。反対に、繊細な線画やグラデーションには不向きなインクです。
当社Tomi label TOKYOのデザイナーがカラーチェンジグラスをつくるときは、
感温インクの版を意識しながら、点や面を駆使してデザインします。
▲感温インクで初めて点表現に挑戦したマイチル。桜の色が変わるフルートグラス。
▲グラデーション表現でフツールの皮を巧みに表現
ふつうのインクとカラーチェンジするインクの違い
感温インクはガラス用のインクの中でも「樹脂系」に分類され、
通常のガラスインクよりも焼成温度が低く設定しなければ
ガラスにプリントできません。
ふつう、ガラスに使う通常インクは焼成するとインクの成分がガラスと融合するため剥げることはありませんが、
感温インクなどの樹脂系のインクは、通常インクの3分の1ほどの低い温度で焼き付けています。
日常的に使用する分には剥げることはないですが、
ツメで感温インク部分を引っかいたり、スプーンなどでこすったり、鍋やフライパンなど他の調理器具と擦れ合うと
プリントが剥がれてしまうので収納時やシンクで洗うときは注意!
ガラスの樹脂インクの応用
艶感があり、色を発色良く出したい場合や、
カラーチェンジ(感温インク)のような仕掛けをデザインに入れたい場合に「樹脂インク」を使用します。
▲冷たくなると、雲の内側に飛び回るツバメとメッセージが現れる雲とツバメ
▲花びらのシルエットがピンクから濃いピンクへ
内側の色が変わるソメイヨシノ
カラーチェンジグラスのNGな取り扱い
カラーチェンジグラスの取り扱いの注意点は2つ
- 硬いものでこすらないこと
- 直射日光の当たる場所に放置しないこと
特に注意したいのは直射日光。
インクが壊れてカラーチェンジしなくなります。
日当たりのいい場所で食後放置したり、窓辺に飾ったり、太陽光の当たる食器棚に保管などは避けた方がGOOD。(食洗機や電子レンジもNGです。詳細は取説を。)
ここからは富硝子で実際におこった出来事。
ある真夏の日、カラーチェンジグラスのサンプルがあがりました。
「うん!いいねぇ!」と社長のお墨付きももらい、
和気あいあいとそのまま窓辺に飾って放置…。
商談の日には、色が変わらなくなってしまいました…!
あわてて再サンプルをアップ。
大失敗!
カラーチェンジグラスの色が変わらないときの対処法
よく、お客様から「お水をいれたけれど、色が変わらない」と
お問い合わせをいただくことがあります。
ほとんどは水道水が原因です。
水道水は常温で、グラスにとっては温度が高いのです。
体感的には「冷たい水」でも、
夏の水道水は8℃以上あるため、感温インクは反応しません。
また、感温インクは瞬時にカラーチェンジしません。
冷たいドリンクからガラスを通って冷たさが伝わり、感温インクが反応するまで2-3分かかります。
ガラスの薄さにもよりますが、気長に待ってみましょう。
カラーチェンジしない時に「本当に壊れてしまったのか」
確かめる方法が3つあります。
氷を入れる
グラスに氷を入れて、飲み物の温度を下げてみてください。
すぐには発色しないので、10分後カラーチェンジしていたらOKです。
冷蔵庫に入れる
空のグラス冷蔵庫にいれて20分ほど放置してみましょう。
壊れていなければ、感温インクの部分がカラーチェンジします。
保冷剤をあてる
部分的にでもいいからすぐに確認したい場合は、保冷剤をインク部分にあてます。壊れていなければ、保冷剤の部分だけ発色するはずです。
「カラーチェンジしたけれど色が薄い…?」
カラーチェンジグラスは、インクの厚みによって「濃さ」に個体差があります。
これはひとつひとつ絵付けしているハンドプリントの過程で
どうしても出てしまうものです。
ほんのりブルーに色づくアイテムもあれば、パキッとピンクが発色するものもあり、商品によってさまざまです。
買ったばかりのカラーチェンジグラスが、まったくカラーチェンジしない場合は保管方法に問題があったと思われます。
しかし「色が薄いな」と感じる程度の場合は、そのような仕様であることが多いです。
まとめ 色が変わるグラスの秘密はインクにあった!
色が変わるグラスのひみつは「特殊なインク」にありました。
特別なインクゆえに、太陽光がNGであったり、ドリンクの温度が関係したりと
他のグラスと違う部分をご説明しましたが、なにもむずかしく考えることはありません!
冷蔵庫から出したてのドリンクを注ぐだけで
カラーチェンジグラスは発色します。
「色が変わる」それだけのことなのに、
実際に見ると「わぁ!きれい!」と子どものようにはしゃいでしまいます。
ガラス屋のわたしたちも、新作サンプルができるたびに
氷水を注いで、はしゃぎます。ときにはキンキンに冷えたビールを
会議中に注ぐことも。
カラーチェンジグラスはプレゼントしても話題になるため
ギフトのなかでも人気TOP3に入ります。
富硝子の食器ブランド・トミレーベルには、
2010年発売のカラーチェンジサクラタンブラーを販売しはじめ、今では15種類以上のさまざまなデザインがあります。
もし、買うのを迷った場合は、カラーチェンジする瞬間の動画も参考にしてみてください。
おすすめのカラーチェンジグラス
▲冷たくなるとくちばしや足の色が変わるごきげん文鳥
▲薄い口当たりとグリーンの発色が珍しいビアグラスハピア
▲ほんのりブルーに色づく雪模様が美しいカラーチェンジユキ
▲ショートステムで収納もしやすいカラーチェンジワイングラスのソメイヨシノ
▲実際に何℃で色が変わるか実験したYoutube
ガラス屋のサラリーマン・営業ミヤナガが 硝子のプロとしてマニアックな情報をお届け! 今回は、冷えると色が変わる「カラーチェンジグラス」をご紹介。
この記事を書いた人
東京・亀戸で70年以上ガラス屋をしている富硝子株式会社(Tomi Glass Co.,Ltd.)。
デザインにこだわったカラーチェンジグラス・トミレーベルや、江戸硝子や小樽硝子などのハンドメイドガラスなど、おしゃれで豊富なアイデアが楽しいガラス屋です。